がんと他の病気を併発(合併症)したらどうなる?治療への影響と日常生活でできる対策を解説

がんと他の病気を併発(合併症)したらどうなる?治療への影響と日常生活でできる対策を解説

「がんと診断されただけでもショックなのに、もともと持病もあるからこれからの治療が心配……」
「もしがんの治療中に、別の重い病気を併発してしまったらどうなるのだろう?」

がんと他の病気が重なることに対して、大きな不安や焦りを抱えていませんか?

医療の現場では、がんと他の病気が重なる状態を主に「合併症(がっぺいしょう)」と呼びます。結論から言うと、持病があったり治療中に別の病気を併発したりしても、がんの治療をすぐに諦める必要はありません。現代の医療は進歩しており、複数の診療科が連携して安全に治療を進める体制が整っているからです。

この記事では、がんにおける併発(合併症)の仕組みや治療への影響、そしてリスクを最小限に抑えるために患者さんとご家族が日常生活でできる対策を、公的な医療情報をベースにわかりやすく解説します。

—

1. がん治療における「併発(合併症)」とは?

ネットや日常会話では「併発」という言葉がよく使われますが、医療現場では少し異なる使われ方をします。まずは言葉の定義と、よくある2つのパターンを整理しましょう。

1-1. 医学的には「合併症」と呼ばれることが多い

医療現場において「合併症」とは、ある病気が原因となって起こる別の病気や、手術・検査などの治療に伴って生じる不都合な症状を指します。一般的にイメージされる「別の病気の併発」も、医療の分類では合併症の一部に含まれます。

1-2. 併発には「2つのパターン」がある

がんと他の病気が重なるケースは、大きく分けると以下の2パターンがあります。

パターンA:持病がある状態でがんになる(併存症:へいぞんしょう)
がんになる前から、糖尿病、高血圧、慢性腎臓病、心疾患などの持病(基礎疾患)を抱えているケースです。
パターンB:がんやその治療が原因で別の病気が起きる(本来の合併症)
がんの進行によって血管が詰まったり、手術や抗がん剤治療の副反応(副作用)として感染症や別の不調を引き起こしたりするケースです。

—

2. なぜがん治療中に他の病気を併発しやすいのか?

がんの治療中や進行期には、健康なときよりも他の病気を発症しやすいリスク(脆弱性)が生じます。主な原因は以下の3つです。

2-1. 手術や抗がん剤による「免疫力の低下」

抗がん剤治療(化学療法)を受けると、血液中のがん細胞だけでなく、骨髄で作られる「白血球」という免疫細胞も一時的に減少します。白血球が減ると、通常なら体に害を及ぼさないような細菌やウイルスにも感染しやすくなり、「肺炎」や「敗血症(はいけつしょう)」などの重い感染症を併発するリスクが高まります。

2-2. がんそのものの影響による「血栓(血の塊)」の発生

がん細胞は、血液を固まりやすくする物質を放出することがあります。そのため、がん患者さんは血管の中に血の塊ができる「血栓症」を起こしやすい傾向にあります。特に足の静脈にできた血栓が肺に飛ぶ「肺血栓塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)」は、命に関わる重要な合併症の一つです。

2-3. 治療のストレスや薬剤による数値の変動

がんという大きな病気に直面する精神的・肉体的ストレスや、治療で使われる薬剤(ステロイド薬など)の影響によって、一時的に血糖値や血圧が急上昇することがあります。これにより、もともと軽かった糖尿病や高血圧が悪化・顕在化する場合があります。

—

3. 持病(糖尿病・高血圧など)がある場合のがん治療はどうなる?

「糖尿病や心臓病があるから、がんの手術は受けられないのでは?」と絶望する必要はありません。現代のがん治療は、「がんの退治」と「持病のコントロール」を両立させることが基本です。

3-1. 原則は「がん治療」と「持病のコントロール」の並行

持病があるからといって、がん治療を全面的に諦めるケースは多くありません。例えば糖尿病であれば、インスリン注射などを適切に使いながら血糖値を一定の範囲にコントロールし、手術の傷が治りやすい状態を維持した上でがん手術に臨みます。

3-2. 「診療科の垣根を越えた連携(チーム医療)」の実施

現在の大規模病院やがん診療連携拠点病院では、チーム医療が徹底されています。
がんを担当する診療科(外科や腫瘍内科など)だけでなく、持病を担当する診療科(糖尿病内科、循環器内科など)の医師、さらには薬剤師や看護師がカルテや治療方針を共有します。「この抗がん剤は心臓に負担がかかるため、循環器内科と相談して薬の量を調整する」といった、患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療が行われます。

3-3. 治療の優先順位が変わるケースもある

場合によっては、安全を最優先するためにスケジュールが前後することがあります。

  • 例:心臓の持病が不安定な場合、まず心臓の治療を優先して状態を安定させてから、がんの手術を行う。
  • 例:持病の影響で手術のリスクが非常に高い場合、手術ではなく放射線治療や体への負担が少ない薬物療法を選択する。

—

4. 家族にできることは?併発・悪化を防ぐための4つの生活対策

がんの併発症や持病の悪化を防ぐためには、病院での治療だけでなく、ご自宅での日常生活のマネジメントが極めて重要になります。ご家族がサポートできる4つのポイントを紹介します。

4-1. 【感染予防】手洗い・うがい・口腔ケアの徹底

白血球が減少している時期は、徹底した感染対策が必要です。

  • 帰宅時や食事前の丁寧な手洗い・うがい。
  • 人混みを避ける、外出時のマスク着用。
  • 口の中の細菌が増えると誤嚥性(ごえんせい)肺炎などのリスクが高まるため、毎食後の優しい歯磨き(口腔ケア)を習慣づける。

4-2. 【食事管理】ネットの噂ではなく「主治医・栄養士の指導」を厳守

「がんに効く食材」「がん細胞を消す食事法」といった極端なネット情報に惑わされないように注意してください。特に糖尿病や腎臓病などの持病がある場合、独断の食事療法は持病の数値を急激に悪化させ、結果的にがん治療をストップせざるを得ない状況を招きます。

食事については必ず病院の管理栄養士や主治医に相談し、指導されたカロリーや塩分量を守りましょう。

4-3. 【体調変化の観察】「いつもと違う」サインを見逃さない

併発症は、早期発見・早期治療が鉄則です。ご家族は、患者さんの以下のような小さな変化に注意を払ってください。

  • 37.5℃以上の発熱、急な寒気(感染症のサイン)
  • 片方の足だけのむくみ、赤み、痛み(深部静脈血栓症のサイン)
  • 階段を上るときの急な息切れ、胸の痛み(肺塞栓症や心不全のサイン)

少しでも「おかしい」と感じたら、次回の診察を待たずに病院へ連絡してください。

4-4. 【情報整理】お薬手帳の一元化とすべての持病の申告

他院で処方されている薬(持病の薬やサプリメント、市販薬も含む)は、すべてがんの主治医に開示してください。お薬手帳は必ず1冊にまとめ、どの病院でも同じものを提示します。薬の飲み合わせによる予期せぬ合併症を防ぐための基本です。

—

5. 不安を一人で抱え込まないための相談窓口

がんと持病の板挟みになり、ご家族だけで介護や看病の悩みを抱え込むのは禁物です。信頼できる相談先を活用しましょう。

5-1. 病院の「がん相談支援センター」を活用しよう

全国の「がん診療連携拠点病院」などには、「がん相談支援センター」という窓口が設置されています。これは、その病院に通院していなくても、誰でも無料で利用できる相談窓口です。

医療費のお金に関する相談、持病とがんの両立についての不安、家族としての接し方など、専門のソーシャルワーカーや看護師が丁寧に話を聴き、解決のヒントを一緒に探してくれます。

5-2. 主治医や看護師に質問するときのコツ

診察室に入ると頭が真っ白になってしまい、聞きたいことを忘れてしまうのはよくあることです。

  • 普段の生活で気になったことや質問は、あらかじめノートやスマホにメモしておく。
  • 診察時はメモを見せながら質問する。
  • 医師の説明が難しかったときは、近くにいる看護師に「先ほどの説明をもう一度わかりやすく教えていただけますか」と声をかける。

—

■ まとめ

この記事のまとめ

持病のコントロールとがん治療はチーム医療で並行・両立ができる

家庭では感染予防・正しい食事管理・小さな体調変化の観察を徹底する

一人で抱え込まず「がん相談支援センター」などの無料窓口を頼る

がんと他の病気の併発(合併症)は、確かに治療の難易度を上げるリスク要因ではあります。しかし、それは「治療ができない」という意味ではありません。

現代の医療は、複数の診療科が連携する「チーム医療」によって、持病をコントロールしながらがん治療を進めるノウハウが蓄積されています。患者さんとご家族が日常生活で感染予防や体調管理を徹底し、病院と密にコミュニケーションを取ることで、リスクは十分に抑えることができます。

一人で抱え込まず、主治医や看護師、そして「がん相談支援センター」の力を借りながら、一歩ずつ治療を進めていきましょう。

—

一次情報・参考ソース一覧

本記事は、以下の信頼できる公的機関・医療機関の一次情報を参考に執筆しています。

“`