70歳以上のがんはどう考える?検診・治療・費用・家族の判断ポイントを解説
70歳以上になると、がんを身近な病気として意識する人が増えてきます。
「この年齢でもがん検診は受けた方がいいのか」
「もし親ががんと診断されたら、治療を受けるべきなのか」
「高齢で抗がん剤や手術を受けるのは負担が大きいのではないか」
「治療費はどれくらいかかるのか」
このような不安を抱える方は少なくありません。
70歳以上のがんを考えるときに大切なのは、年齢だけで判断しないことです。
同じ70代でも、仕事や趣味を続けて元気に生活している人もいれば、持病や体力低下によって治療の負担が大きくなりやすい人もいます。
そのため、がん検診や治療は「70歳以上だから受ける」「高齢だから受けない」と一律に決めるのではなく、本人の体調、持病、生活の自立度、治療の目的、本人の希望を踏まえて考えることが重要です。
この記事では、70歳以上のがんについて、検診・治療・費用・家族が確認したいポイントをわかりやすく解説します。
70歳以上になると、がんはより身近な病気になる
がんは年齢とともにリスクが高まりやすい病気です。
国立がん研究センターの統計では、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性で約2人に1人、女性で約2人に1人とされています。
また、2023年に新たにがんと診断された人は約99万人、2024年にがんで亡くなった人は約38万人とされており、がんは日本人にとって非常に身近な病気です。
70歳以上になると、若い世代よりもがんの発症リスクが高くなるだけでなく、持病や体力の低下、認知機能の変化なども重なりやすくなります。
そのため、がんが見つかった場合には、がんそのものの状態だけでなく、本人の全身状態を含めて治療方針を考える必要があります。
ただし、「高齢だからがんになっても治療できない」と決めつける必要はありません。
体力があり、日常生活を自立して送れている人であれば、70歳以上でも標準的な治療を受けられる場合があります。
大切なのは、年齢ではなく、その人にとって治療の利益が負担を上回るかどうかを丁寧に確認することです。
70歳以上でもがん検診は受けるべき?
70歳以上のがん検診は、本人の状態に合わせて判断することが大切です。
がん検診には、がんを早期に見つけられる可能性がある一方で、すべての人に同じように有益とは限らない側面もあります。
厚生労働省は、市町村による科学的根拠に基づくがん検診を推進しており、がんで亡くなることを防ぐためには、死亡を減らす効果が確実で、利益が不利益を上回る検診を受けることが大切だとしています。
つまり、がん検診は「受ければ必ず安心」というものではなく、検査によって得られる利益と、検査によって生じる可能性のある不利益の両方を知ったうえで判断する必要があります。
がん検診の主な利益
がん検診の大きな目的は、自覚症状が出る前の段階でがんを見つけ、必要な治療につなげることです。
早期に見つかることで、治療の選択肢が広がる可能性があります。
たとえば、進行してから発見されるよりも、体への負担が少ない治療を選べる場合があります。
また、検診で異常がなければ、一定期間は大きな不安を軽くできることもあります。
がん検診の主な不利益
一方で、がん検診には不利益もあります。
代表的なものは、がんではないのに「がんの疑いあり」と判定される偽陽性です。
この場合、精密検査が必要になり、身体的・精神的な負担が生じることがあります。
また、命に影響しない可能性があるがんまで見つかり、結果的に必要以上の検査や治療につながる過剰診断の問題もあります。
70歳以上では、内視鏡検査や精密検査、治療そのものが身体に負担となるケースもあるため、検診を受ける前に「もし異常が見つかったら、精密検査や治療を受ける意思があるか」まで考えておくことが大切です。
70歳以上でがん検診を考えるときの判断ポイント
70歳以上でがん検診を受けるか迷ったときは、次の点を確認しましょう。
70歳以上でがん検診を考えるときの確認ポイント
日常生活をどの程度自立して送れているか
持病や治療中の病気があるか
異常が見つかった場合に精密検査を受けられるか
本人が何を望んでいるか
日常生活をどの程度自立して送れているか
普段から自分で歩ける、食事や入浴、着替えなどを自分で行える、外出や通院ができるといった状態であれば、検診や精密検査に進める可能性があります。
一方で、寝たきりに近い状態だったり、通院そのものが大きな負担になったりする場合は、検診の利益よりも負担が大きくなることがあります。
持病や治療中の病気があるか
心臓病、呼吸器疾患、腎臓病、糖尿病などの持病がある場合、検査や治療による負担が大きくなることがあります。
また、すでに別の病気で治療中の場合は、がん検診を受けるべきか、主治医に確認することが重要です。
異常が見つかった場合に精密検査を受けられるか
検診は、異常を見つける入口です。
検診で「要精密検査」となった場合、追加の検査を受けなければ、がんかどうかは判断できません。
そのため、検診を受ける前に、精密検査を受ける体力や意思があるかを考えておく必要があります。
本人が何を望んでいるか
70歳以上の医療判断では、本人の意思がとても重要です。
「早く見つけて治療したい」
「体に負担の大きい検査や治療は避けたい」
「できるだけ今の生活を続けたい」
このように、本人が何を大切にしたいかによって、検診や治療の選び方は変わります。
家族が心配して検診を勧めることは自然ですが、本人の気持ちを置き去りにしないことが大切です。
70歳以上で受けられる主ながん検診
国が推奨するがん検診には、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんなどがあります。
代表的な検診の対象年齢と受診間隔は以下の通りです。
| 検診の種類 | 主な検査内容 | 対象年齢の目安 | 受診間隔の目安 |
|---|---|---|---|
| 胃がん検診 | 胃部X線検査または胃内視鏡検査 | 50歳以上 | 2年に1回 |
| 大腸がん検診 | 便潜血検査 | 40歳以上 | 1年に1回 |
| 肺がん検診 | 胸部X線検査など | 40歳以上 | 1年に1回 |
| 乳がん検診 | マンモグラフィ | 40歳以上 | 2年に1回 |
| 子宮頸がん検診 | 細胞診など | 20歳以上 | 2年に1回 |
ただし、自治体によって実施内容や対象年齢、自己負担額が異なる場合があります。
また、70歳以上の場合は、検査の負担や精密検査の必要性も含めて、かかりつけ医に相談してから受けると安心です。
70歳以上でがんと診断されたら、治療はどう考える?
70歳以上でがんと診断された場合、治療を受けるかどうかは年齢だけで決まりません。
国立がん研究センターは、高齢のがん患者では、併存症がある割合が高く、臓器機能が低下していることも多いため、治療による合併症や副作用が起こりやすい傾向があるとしています。
一方で、全身状態が良好な高齢者では、若い患者と同様の治療効果が期待できる場合があり、高齢という理由だけで治療対象から外すべきではないとも示されています。
つまり、70歳以上のがん治療では、次のような視点が重要です。
- がんの種類
- がんの進行度
- 本人の体力
- 持病の有無
- 認知機能
- 日常生活の自立度
- 治療による副作用や合併症のリスク
- 本人が望む生活
- 家族や介護者のサポート体制
同じ「70歳以上」でも、治療の選択肢は人によって大きく異なります。
そのため、医師から治療方針を聞くときは、「何歳だからできる・できない」ではなく、「この人の状態で、どの治療にどの程度の効果と負担があるのか」を確認することが大切です。
70歳以上で選ばれる主ながん治療
がん治療には、主に手術、放射線治療、薬物療法、緩和ケアなどがあります。
70歳以上でも、がんの種類や進行度、本人の状態によって、これらの治療が選ばれることがあります。
手術
手術は、がんを切除する治療です。
早期がんや、がんが限られた範囲にとどまっている場合に選択肢となることがあります。
ただし、高齢者の場合は、麻酔や術後の回復、合併症のリスクを慎重に確認する必要があります。
手術そのものが成功しても、術後に体力が大きく落ちたり、生活の自立度が下がったりする可能性もあります。
そのため、手術を検討する際は、がんを取り除けるかだけでなく、術後にどのような生活が想定されるかまで確認しましょう。
放射線治療
放射線治療は、がんのある部分に放射線を当てて治療する方法です。
手術が難しい場合や、体への負担を抑えたい場合に選択肢となることがあります。
ただし、治療部位や治療回数によっては、通院の負担が大きくなる場合があります。
高齢者では、治療効果だけでなく、通院できるか、家族の付き添いが必要か、治療中の生活を維持できるかも考える必要があります。
薬物療法
薬物療法には、抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などがあります。
薬物療法は全身に作用するため、がんの種類や進行度によって重要な治療選択肢になります。
一方で、副作用が出ることもあり、高齢者では体力や臓器機能、持病との兼ね合いを慎重に見る必要があります。
薬物療法を提案された場合は、期待できる効果、副作用、治療期間、通院頻度、途中で中止できる条件などを確認しましょう。
緩和ケア
緩和ケアは、痛みや息苦しさ、不安、治療によるつらさなどを和らげるためのケアです。
「緩和ケア=終末期の医療」と思われることがありますが、実際にはがんと診断された時点から受けられる支援です。
治療と並行して受けることもできます。
70歳以上のがんでは、治療の効果だけでなく、本人ができるだけ穏やかに過ごせることも大切です。
痛みやつらさを我慢せず、早い段階から医師や看護師に相談しましょう。
70歳以上で「治療しない」という選択はあり?
70歳以上でがんと診断された場合、積極的な治療を受けないという選択をすることもあります。
ただし、「治療しない」とは、医療を受けずに放置するという意味ではありません。
がんそのものを小さくする治療を行わない場合でも、痛みや苦しさを和らげる医療、生活を支えるケア、在宅療養の支援などを受けることはできます。
治療しない選択を考えるケースには、次のようなものがあります。
- 治療による負担が大きすぎる
- がん以外の病気の影響が大きい
- 治療しても期待できる効果が限られる
- 本人が入院や強い副作用を避けたいと希望している
- 残された時間を自宅や家族との生活に使いたい
大切なのは、家族だけで「高齢だから治療しない方がいい」と決めないことです。
本人の意思を確認し、主治医から治療した場合・治療しない場合の見通しを聞き、必要に応じてセカンドオピニオンを活用しましょう。
70歳以上のがん治療費はどれくらいかかる?
がん治療にかかる費用は、がんの種類、進行度、治療内容、入院の有無、通院期間によって大きく異なります。
主にかかる費用には、次のようなものがあります。
- 診察費
- 検査費
- 手術費
- 入院費
- 薬物療法の費用
- 放射線治療の費用
- 通院交通費
- 付き添いにかかる費用
- 介護サービスや生活支援の費用
公的医療保険の対象となる治療であれば、医療費の自己負担には一定の上限が設けられています。
代表的な制度が、高額療養費制度です。
高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が、ひと月の上限額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度です。
上限額は、年齢や所得によって異なります。
70歳以上では、所得区分によって外来のみの上限や世帯単位の上限が定められています。
がん治療では、手術や薬物療法などで医療費が高額になることがあります。
そのため、治療を始める前に、加入している健康保険や病院の相談窓口で、高額療養費制度の対象になるか確認しておくと安心です。
公的医療保険の対象外になる費用もある
高額療養費制度があるとはいえ、すべての費用が対象になるわけではありません。
たとえば、差額ベッド代、通院交通費、入院中の日用品、家族の付き添い費用、自由診療の費用などは、制度の対象外になる場合があります。
また、在宅療養を選ぶ場合は、介護保険サービスや訪問看護、福祉用具などの利用も関係してくることがあります。
費用に不安がある場合は、早めに医療ソーシャルワーカーやがん相談支援センターに相談しましょう。
家族が確認したい判断ポイント
70歳以上のがんでは、本人だけでなく家族も治療や生活の判断に関わることが多くなります。
ただし、家族が先回りしてすべてを決めるのではなく、本人の希望を尊重しながら、必要な情報を一緒に整理することが大切です。
本人が何を大切にしたいかを聞く
まず確認したいのは、本人の希望です。
- できる治療は受けたいのか
- 副作用が強い治療は避けたいのか
- 入院より自宅で過ごしたいのか
- 生活の質を優先したいのか
- 家族にどこまで関わってほしいのか
本人の希望は、治療方針を決めるうえで重要な判断材料になります。
医師の説明を一緒に聞く
高齢者のがん治療では、説明内容が複雑になりやすく、本人だけでは十分に理解しきれないことがあります。
可能であれば、家族も診察に同席し、医師の説明を一緒に聞きましょう。
その際は、次のような点をメモしておくと役立ちます。
・がんの種類と進行度
・治療の目的
・治療によって期待できる効果
・起こりうる副作用
・入院や通院の期間
・治療しない場合の見通し
・緩和ケアを使えるタイミング
・費用の目安
・家族がサポートすべきこと
相談窓口を活用する
がんについて迷ったときは、主治医だけでなく、がん相談支援センターを活用することもできます。
がん相談支援センターは、がん診療連携拠点病院などに設置されている相談窓口です。
患者本人だけでなく、家族や、その病院に通っていない人も相談できます。
治療のこと、療養生活のこと、お金のこと、家族との関わり方など、幅広い相談ができます。
「何を相談していいかわからない」という段階でも利用できるため、家族だけで抱え込まないことが大切です。
70歳以上のがんについてよくある質問
一律に必要・不要とは言い切れません。
日常生活の自立度、持病、検査や精密検査に耐えられるか、本人が早期発見を望むかによって判断する必要があります。
迷う場合は、自治体の案内だけで決めず、かかりつけ医に相談しましょう。
70代でも治療できる場合はあります。
年齢だけで治療の可否が決まるわけではなく、がんの種類や進行度、本人の体力、持病、日常生活の状態などを総合的に見て判断します。
薬物療法は副作用が出ることがあるため、高齢者では慎重な判断が必要です。
ただし、薬の種類や投与量、治療スケジュールを調整しながら行う場合もあります。
医師に、期待できる効果と副作用、途中で中止する基準を確認しましょう。
受けられます。
がんを小さくする治療を行わない場合でも、痛みや息苦しさ、不安を和らげる緩和ケア、在宅医療、訪問看護などを利用できる場合があります。
治療しないことと、何もしないことは同じではありません。
まずは本人の希望を確認し、医師の説明を一緒に聞くことから始めましょう。
そのうえで、治療の選択肢、費用、通院や介護の体制、相談窓口を整理していくことが大切です。
不安が大きい場合は、がん相談支援センターや医療ソーシャルワーカーに相談しましょう。
まとめ:70歳以上のがんは、年齢だけでなく本人の状態に合わせて考える
70歳以上のがんでは、検診を受けるか、治療を受けるか、どこまで治療するかを、年齢だけで決めるべきではありません。
大切なのは、がんの状態、本人の体力、持病、生活の自立度、治療の目的、本人の希望を総合的に考えることです。
がん検診には早期発見につながる可能性がある一方で、精密検査や過剰診断などの不利益もあります。
治療についても、効果が期待できる場合がある一方で、副作用や生活への影響を慎重に考える必要があります。
家族は、本人の気持ちを尊重しながら、医師の説明を一緒に聞き、必要な情報を整理する役割を担えます。
不安を抱え込まず、主治医、かかりつけ医、がん相談支援センターなどの専門的な相談先を活用しましょう。
70歳以上のがんに向き合ううえで大切なのは、「高齢だから」とあきらめることでも、「できる治療をすべて受ける」と無理に決めることでもありません。
本人にとって納得できる選択を、医療者や家族と一緒に考えていくことです。
この記事のまとめ
70歳以上のがんは、年齢だけで検診や治療方針を決めないことが大切です。
検診は利益と不利益を理解し、精密検査や治療を受ける意思まで含めて考える必要があります。
治療方針は、がんの状態、本人の体力、持病、生活の自立度、本人の希望をもとに判断します。
費用面では、高額療養費制度や相談窓口を早めに確認しておくと安心です。
家族は本人の意思を尊重しながら、医師の説明や相談窓口を活用して情報を整理しましょう。
参考資料
- 国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診について」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「年齢・全身状態別余命データ」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「緩和ケア」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「がん相談支援センターとは」
- 国立がん研究センター がん情報サービス「家族ががんになったとき」
- 厚生労働省「がん検診」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」